恋する彼女の不器用な舞台 - Official Website

ギャラリー

幼なじみの不器用な舞台
 場内灯が消え、辺りが真っ暗になった。
 会場内の空気が、ぴりりと引き締まる。
 カラカラと歯車の回る音がして、再びうっすらと明かりが戻ってきた。
 緞帳が上がった。
 会場内の温度が、一気に下がったような気がする。
 次の瞬間を想像して、瞬きもせず、誰もが微動だにしない。
 全身で、舞台が動くのを待っている。
 パチンという微かな音と共に、ライトが点く。
 立っているのは、一人の女の子だ。
 華奢で、小さくて、可愛らしい女の子。
 さっきまで俺と会話をしていた幼なじみ。
 そのはず、なのに――
 ステージの上にいる彼女は、別人のようだった。
 何百もの視線の中心にいる彼女の全身から、気迫がほとばしっていた。
 ただそこにいるだけなのに、視線が釘付けになってしまう
 圧倒的な存在感……威圧感……
 ああ、彼女は天才なのだと感じる。
 自分の知っている女の子ではないのだと思わされる。
 その時――
 彼女は、確かに俺を見た。
 まっすぐな視線――けれど、微かに不安げに陰っている。
 紛れもなく、俺の幼なじみの顔だった。
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