GALLARY

*Nagakura Konatsu*
×小夏
「っ……来た……
 『せんぱーいっ。早く早く、こっちですよー』……」
×祐果子
「…………えっと、一度止めますね」
×小夏
「ぁ、すみません。
 もっとしっかり演技した方が良かったですか?」
×祐果子
「いいえ、そうじゃないんです。
 今のセリフの入りのタイムを、台本に書いてもらいたくて」
×啓人
「……ぁぁ、そういうためのカウンターか」
×小夏
「? いりのたいむ?」
×
 一方、なにを言われたのかさっぱり分からないのか、
 妹はぽかんとしていた。
×いつみ
「このセリフの言い始めの瞬間が何分何秒なのかを、
 台本に書いておいてほしいの」
×いつみ
「このカウンターを目安に、キャラの口が動くから」
×小夏
「ぁ……なるほどっ。
 声が口パクと合ってないとダメですもんね」
×
 理解をしたのか映像を戻し、せっせとセリフ箇所に
 『カナデ』と表示された瞬間の秒数を書き込んでいく。
×啓人
「……これって、終わりの秒数も把握する必要ありますよね?
 そうなると」
×祐果子
「うーん……わたしは、入りだけを書いてます。
 上がりは気にしなくても、自然に読めば大体収まりますし」
×
 『上がり』というのは『言い終わり』という意味だろう……
 いや、突っ込むべきはそこではなくて。
×啓人
「え……え? いやいやいや、そんな風にいくものですか?」
×
 それって、天才の所業じゃないの?
×祐果子
「もちろん早口のお芝居を求められたりする……みたいな、
 例外もありますけど、そういう特殊な例こそ
 ここでチェックすればいいわけですから」
×啓人
「…………」
×
 本当に?
×
 素人考えだと、セリフを何秒で言い終えるか、というのは
 結構重要な問題だと思うんだが。
×
 早く言い終わりすぎて口パクを余らせたり、
 その逆とかだって――