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「かなでの手当て」
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智希
「そもそも……汚くて嫌だろう、俺の指を舐めるなんて……無理なんてしなくていいから」
かなで
「どうして? 汚くなんてないよ……」
かなで
「……ちゅっ」
智希
「ううっ……!」
かなで
「あっ……ごめんなさい。染みちゃった?」
智希
「いや、大丈夫……」
かなで
「そっか、良かった。染みちゃったり強く舐めすぎちゃってたりしたら教えてね」
かなで
「ん……ちゅう……える……」
 かなでの唇や舌先が指先を擦るたび、頭の奥が甘くしびれる。
 ざらついた舌が傷口を撫でると、痛気持ちいい感覚が
 つま先から頭の先までビリビリッと通り抜けていく。
 舐められているのは指先だけなのに、まるで全身をそうされているかのような錯覚に陥る。
かなで
「ん……はぁ……ともくん、汗かいてきた……?」
智希
「えっ?」
かなで
「はぁふ……手のひらがぬるぬるってしてきたから……
 それに、少ししょっぱい味もしはじめて……」
かなで
「傷口が、熱を持ってるってことだよね……ちゅっ……
 たしか……ちゅぅ……ばい菌と戦ってるから、熱くなるんだよね……?」
智希
「あ、ああ、そういえばそうだったかもな」
かなで
「大変、もっとしっかり消毒しないと……」
かなで
「ちゅうっ……ちゅぅぅっ……」
智希
「っっっ……!」
 かなでが指先を咥えて、思い切り吸う。
 感覚の全てが指先に──かなでの口が触れている部分に持っていかれてしまいそうな感覚。
 鼓動が早くなるどころか、機能を停止してしまいそうなシチュエーション。
 手に汗をかいているのは、明らかに傷のせいじゃない。
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